知らないことは調べてみたほうがわくわくできるかもその③

先々週はアガベスピリッツ、先週カルヴァドスと、名前は知ってるけど実はよく知らなくないですかその酒について、というのを続けています。じゃあ君はビールは知っているのかね、焼酎は知っているのかね、と聞かれますと実はあんまり存じ上げておりませぬということもあるかもしれませんが、もっと全然しらないのしの字も知らない、みたいな話であります。
そんなことでも飲み歩いて出会ってしまうのが酒なわけで、スマホがあれば何でも調べられるご時世、ちょっとくらい知っておくと、飲むのがすこしたのしくなったりしやせんか、とこういう連載なわけですね。

さて、シードルを蒸留したらカルヴァドスの流れのなかに、ワインを蒸留したらブランデー、という話が出てきたわけですが、ご親族ですか?というのが、そうグラッパです。

イタリアンでたらふく食べてワインもたらふく飲んで、デザートなんかもいただいて、そろそろごちそうさまでしたというころに、何本もの酒を載せたカートがガラガラとやってくることがあります。グラッパ。いまならば、いいですねえ、どれにしましょうかね、なんて喜んで眺めるところですが、もう少し若いころのわたくしは、あれがあんまり好きではない、というよりも、好き嫌い以前に意味がよくわかりませんでした。

これは余談ですが、イタリアンの麺類を食べるときにスプーン使う人が一定数いますが、あれは実は全然正統派ではなくて、なんならどちらかといえば邪道よりというのはご存知ですか。一説には、日本でイタ飯が流行ったときに映っていた港区の淑女たちが、口を小さくしか開けたくないもんだからスプーンを使っていて、それが田舎もんに刺さった、なる話を聞いたこともありますが、真偽の程は知りませんしどうでもよいです。ちょっと調べてみよかなとインターネッツを眺めていたら、海外映画にでてくるマフィアたちがどうやって食べてるかをまとめた、なんていう面白い記事なんぞにも行き当たりました。

話が脱線しましたけれども、とにかく腹一杯にたべおわり、ワインも何本か空けて、もう十分に酔っ払った。というのに、そこから40度だか50度だかの透明な酒を何本も見せられて、さあどれにしますかと聞かれる。なんかちょっと嫌だなあだった記憶があるのですが、そもそもこれをいわゆるカタカナの「ショット」、だと思っていたのがそもそも間違いなんですわね。

歳をかさねて最近になってよくよく飲んでみると、これがなかなかいいではないですか。グラッパとは、ワインをつくるために葡萄を搾ったあとに残る皮や種など、イタリア語でヴィナッチャと呼ばれるものを蒸留してつくる酒であります。ワインを蒸留したものがブランデーであるのに対して、ワインにならなかった方を(ごにょごにょとしたりしなかったりしてから)蒸留したものです。

粕の方、確かにもったいない。うまい酒になるもとになったぶどうの残り、そりゃうまいでしょうな、これもどうにかできんのか、たべる?のめる?どうする?!そんな先人たちの顔が浮かびます。

ふと、そういえばわれわれ日本にも似たようなものがあるのでは?と。そう、粕取焼酎とか、酒粕焼酎とか言われるそれです。

日本酒をしぼったあとに残る酒粕を原料につくる焼酎。葡萄を搾ったあとのヴィナッチャからつくるグラッパとよくにた関係性をもっています。もちろん細かくはちがいますよ。でも残りもんだったものの再発見です。肉でいったらホルモン?ちょっと雑すぎるか。

グラッパといえば食後酒。イタリアではディジェスティーヴォなどと言われ、食事のあとに飲まれ、エスプレッソを飲んだあとにグラッパやアマーロなんかをやる「アマッツァカッフェ」なんて習慣もあります。アマッツァカッフェは直訳すると、珈琲殺しですか?そんな言うなら飲まんでええがな、、と思ったりもしますが、鬼殺しだとか、意外と世界中みんな殺しとか言う単語って好きだったりしますよね、とまた横みちへ。もちろん全員が飲むわけではなく、隣の人はエスプレッソだけ、こちらはグラッパだけ、あるいはコーヒーも酒も全部やるという人も、食事の終わり方十人十色というわけです。

若いころのわたくしが、まだ飲みますのと思っていたそれは、まだ飲むのではなく、これで飲み終わるよという一杯ということなのかもしれません。

であれば粕取り焼酎にもそんな居場所があったらおもしろい。

日本酒を飲みながら食事をして、最後に酒粕からつくられた焼酎を一杯。イタリアンの最後にグラッパのカートがやってくるくらいの自然さで、「最後に粕取りでもいかがですか」なんて言われるような店、どうですか。ビジネスチャンス?

さて今週のヨヨイノヨイは。

ある日の居酒屋。
2度目に訪れた、こういうのがいいんだよ、の店です。
焼酎はたくさん置いてある店なのですが、粕取はなかった。

これで食事が終わってさて帰りますか、というときに、くいっと45mlか、いや60mlくらいでしょうか、粕取焼酎がでてくる、なんてことを妄想しました。

〆のご飯、でもあるのか!とここまで書いてて今更気づいたり。

この記事を書いた人

逸見愚栄(へんみ ぐえい)