東京の酒場において、烏龍ハイや緑茶ハイ・紅茶ハイ等、お茶割りは長く親しまれてきた存在です
なかでもキンミヤのようなクセのない甲類焼酎は、お茶の香りを素直に受け止め、食事の横で気取らず飲める一杯として、日常の風景にすっかり根づいています
もちろん、それはそれで素晴らしいお茶割りの姿です!
けれど最近、改めて思うんです…
原料や造り手の個性が残るクラフト焼酎とお茶が出会うと、お茶割りはまったく新しい表情を見せてくれるのではないか?
なんて…
先日、学芸大学の「茶割」で開かれた、大和桜酒造の若松徹幹さんを招く「茶と酒と人。」に参加してきました
店主であり、一般社団法人日本お茶割り協会会長の多治見さんが仕立てる一杯は、そんなクラフト焼酎とお茶割りの新しい関係を、それはそれはとても気持ちよく見せてくれました


挽き茶が、大和桜の芋の気配をひらく
特に印象的だったのが、大和桜のレギュラー焼酎に、福岡・久留米「茶番」の挽き茶を合わせた、大和桜の「茶番カルチャー割り」です
ひと口目には、挽き茶の濃く青い香りが広がり、それに続いて、大和桜特有のふくよかな甘みと、土っぽさを含んだ芋の気配がゆっくりと立ち上がってくる…
飲み込んだあとには、茶葉の香ばしさと爽快なほろ苦さが、すっと鼻に抜けていきました
お茶が焼酎のクセを隠すのではなくて、焼酎の持ち味に、鮮やかな緑の香りを一筆添えてくれるような感覚でした
桃の香りが、大和桜747に風を通す
「大和桜747の桃香烏龍茶割り」も魅力的でした
まず届くのは、桃を思わせる華やかな香り
そこに大和桜747の甘やかな香りが重なり、桃香烏龍茶の軽やかさが、全体に心地よい風通しをつくります…
素材の個性を打ち消すのではなく、普段とは少し違う角度から光を当てる
そんな香りの重なり合いがありました…
お茶割りは、焼酎を飲みやすくするためだけのものではないと思います
焼酎が持つ香りに別の輪郭を与え、その個性を飲み手へやさしく手渡すための入口になる…


正解よりも、好きなお茶から始めてみる
焼酎の飲み方には、ときどき「正解」を求められるような堅苦しさがありますが、最初から知識を詰め込む必要は、全くないと思っています
香ばしい気分なら番茶やほうじ茶
少し華やかに過ごしたい夜なら、桃香烏龍茶やジャスミン茶…
まずは好きなお茶を直感で選び、そこにクラフト焼酎を寄り添わせてみる
そんな選び方があると思うんです
産地が育んだ焼酎の価値そのものを、東京の酒場が代わりにつくることはできません!
けれど、その魅力に出会うための心地よい導線を、街のカウンターからつくっていくことはできると思っています
三軒茶屋の現場でも、お茶とクラフト焼酎のまだ見ぬ相性を試しながら、飲み手のみなさんと一緒に「まだ名前のない一杯」を探していきたい
今夜、まずは好きなお茶を選ぶことから始めてみたりする…
そんな気負わない一杯が、まだ知らなかった焼酎や、その向こうに広がる土地と造り手へ、静かにつながっていくのかもしれません

【三軒酎屋の中の人note】
毎週土曜日更新
女性の1人飲みの参考書?
倉嶋紀和子(くらしま きわこ)
日本の雑誌編集長、エッセイスト、タレント
大衆酒場文化の第一人者として多方面で活躍
・肩書:『古典酒場』創刊編集長
・称号:酒サムライ(2022年叙任)
・愛称:酔女(吉田類さん命名の俳号)
・雑誌創刊:2007年に居酒屋特化誌『古典酒場』を創刊
・TV出演:『二軒目どうする?』『にっぽん酒処めぐり』など

