行きたかったけど行けなかった店、それがこの町にまた来る口実

それなら私がそっちの店に行ってきますよ、と初対面からまだ30分ほど経ったか経ってないかの、隣に立つおじさまから言われた、という話をいたしましょう。

今週もとある地方へきております。初めて訪れたのはもう12年か13年かそのくらい前でしょうか。
当時もうお酒は飲める年でしたし飲みにも出ていたと思いますが、どうもいい酒場に出会ったという記憶はございません。
一軒、その町にある有名なショー酒場とでもいうのでしょうか、鳴り響くミュージックめくるめくパフォーマンスを全身に浴びながらビールを飲む、そんな場所には行った気がします。
え、えっちな店じゃないですよ。ショーパブ?いえ、そういうのではないです。

次に訪れたのは3年ほど前でしょうか。もうその頃の私といえば、良い酔いナイト探し回りマシィンとして稼働しているときでした。
行く店行く店大当たりを引き続け、えらいハッピーな気分で宿へ帰り着いたような記憶があります。
そのときの一軒目、今回も是非とも再訪したかったのですが、なんと臨時休業にて改装中でした。
なんということでしょう、しかしこれは新しい店を探しなさいという神の啓示ととらえ、まずは風呂屋に向かいます。

有形文化財にも登録されているかっこよすぎる湯。ミーハーなわたくしは、この町に来たならばここはやはり絶対に外せないなと、毎度きてしまうのです。
今日の湯加減も熱すぎて最高。
湯上がりに滝のような汗をかきながら向かうは立ち飲み屋。あまり店の開いていない細いアーケード商店街のなか、あまりにも煙がですぎている場所が見え、あれに違いないなあと胸が高まっていくのを感じつつ歩みを早めます。

半壊して中身の見えているエアコンから、白い霧が吹き出している蒸し風呂のような店内。
名物のホルモン焼きと中瓶をいただきます。
一緒にキムチはいかがですかと聞かれメニューを見ると日替わりと書いてあるものですから、なにがありますのと訊ねると、いくつかの聞き慣れた野菜たちの最後に、あとガリがあります、というではないですか。なに、ガリのキムチって。

ガリのキムチの味はみなさんに想像していただきつつ、うだる暑さのなか飲み進めていますと、次の店から合流しましょうと話していた、この地に住むたまに会う友人から、二つの候補店が送られてきました。
どちらからですかとか、何度目ですかとか、当たり障りのない会話をしていた店主に、こことここならどちらがお好きですか、と投げかけてみます。

なんということでしょう!求めていた30倍の熱量で教えてくれるではないですか。どんな料理が出るのか、どんな店主なのか、自分はこういうところは良いと思ったが、ここは良くないと思った、と。
あ!僕からこんなに言うのは違いましたね!と思い出すように慌てておっしゃった頃には、すでにわたしと、となりのおじさまの瞼の裏に、その2店舗の様子がありありと思い描けたのでした。

そんなわけで僕が、ではこちらに行ってみることにしますよ!と決意を表明しますと、冒頭のシーンであります。
隣でわたくしと同じくホルモンとビール、そしてマッシュルームと焼酎ソーダをキメていたおじさまが、それなら私がそっちの店に行ってきますよ、と。

ああ!なんということでしょう、これほどまでに分裂したい日があるでしょうか。一人だったらハシゴすることもあったでしょうが、この日はその店で友人と合流したのちは予定が詰まっておりました。そう、かくしてわたくしは、またこの町へ戻ってこなければならなくなったのです。

さて今週末のヨヨイノヨイは。

まさに上に書いた、ホルモン焼きとガリのキムチと中瓶のこちらのお店です。
豚の部位が4種まざったものだそうで、ステンレスのバットに盛られてでてきます。

店主によると、東京は串焼きのホルモンが多いでしょうが、関西ではホルモンといえば鉄板で焼いてこのスタイルが王道ですよ、とのこと。

プリプリの食感に、タレがたっぷり。いいから飲めよ!と言われているかのような味でした。

それではまた来週!

この記事を書いた人

逸見愚栄(へんみ ぐえい)