レッツバイチュー2|土曜19時、神田。味坊集団原点で白酒と羊とスパイスを。

土曜日の19時前。

神田駅周辺には、これから食事へ向かう人、すでに一杯楽しんできた人が行き交っている。
そのにぎわいを抜けて神田の高架下を進んでいく。
「神田 味坊」の扉を開けると、羊肉が焼ける香ばしい匂いと、クミンや唐辛子などのスパイスの香りが一気に押し寄せてきた。

今夜、ここで開催されるのは、味坊集団とbacchanteによる白酒イベント「BAIJIU NIGHT vol.2」。

2026年7月に秋葉原の香福味坊で開催した第1回に続き、今回は会場を神田味坊へ移し、総勢35人が集まった。
第1回の参加者から約15人増え、第2回はさらに大きな会になった。

「第1回に行けなかったので、今回は楽しみにしていました」
そう話す初参加者がいる一方で、第1回から続けて参加してくれた人もいた。

前回飲んだ白酒の話をしながら再会を喜ぶ人。その輪へ、初めて参加する人が自然に加わっていく。
「久しぶりです」と「はじめまして」が同じテーブルで入り混じる光景に、イベントが少しずつ“続いていく場所”になっていることを感じた。


そんな色んな方々と同じテーブルで交わる。
第2回のBAIJIU NIGHTには、そんな世代や経験を越えたにぎわいが生まれていた。

白酒王子と巡る、5種類の香りの旅

今夜の案内役は、今回も味坊集団の「白酒王子」こと林さん。

林さんの説明を聞きながら、グラスへ白酒が注がれていく。

第2回で用意されたのは、産地、香型、アルコール度数の異なる5種類だ。
今回は前回と違い、最初の一杯は「中国版スパークリング」

白酒にコーラを混ぜて泡の飲み物として最初を楽しんでいく。
まず、スパークリングとして活躍する白酒は北京の「清香(チンシャン)型」紅星二鍋頭。

今回のラインナップで最も度数の高い56度だが、香りはすっきりと澄んでいる。
華やかな濃香型、個性のある鳳香型、奥深い醤香型を巡った後に飲むと、清香型の輪郭がよりはっきりと感じられる。
これにコーラを掛け合わせることで、アルコール度数を低くすることもそうだが、白酒の穀物の香りにコーラの甘さとスパイス感が重なり白酒らしい余韻は残りながらも角がやわらぎこのイベントの開催を告げられているように感じた。
度数だけ聞くとびっくりするが、「これは美味しい。初めて飲んだ感覚だ!」等とあちこちで声が聞こえてくる。

続いて、華やかな香りとやわらかな口当たりが特徴の「濃香(ノンシャン)型」洋河大曲。
白酒のなかでは比較的穏やかな38度で、グラスに鼻を近づけると、ふわりと甘く華やかな香りが立ち上がる。
白酒を初めて飲む人にとっても、香りの豊かさを感じやすい一杯だ。
「白酒はもっと刺激の強いお酒だと思っていました」
そんな声も聞かれ、白酒に対する最初の緊張が少しずつほどけていく。

そして、白酒の王様言われる「醤香(ジャンシャン)型」の茅台醇。
赤いボトルがひときわ目を引く。
長く続く余韻と、香ばしさ、熟成感、いくつもの要素が複雑に重なる香りが特徴だ。
一口飲んだだけで分かりやすく答えが出るというより、口に含んだ後、時間とともに印象が変わっていく。
すぐに次の一杯へ進まず、グラスに残る香りをじっくり確かめる参加者もいる。
白酒に詳しい人と初めて飲む人が、それぞれに感じた香りを伝え合うことで、「難しそう」に見えた醤香型が、少しずつ会話を生むお酒へ変わっていった。

その横には前回も登場した林さんも好きな白酒の「濃香(ノンシャン)型」の沱牌六糧。
先ほどの醤香型とは一気に変わる果実さを感じる白酒。
前回のイベント後には、この白酒を自身で購入してくれる方がいたほど白酒の入り口にはとても良い味わいだ。

そして最後は、「鳳香(フォンシャン)型」の西鳳酒。
西鳳酒を代表とする「鳳香型」は、今回並んだほかの香型とは異なる、個性豊かな香りを持つ。
爽やかさがありながら、香ばしさと力強さも感じられる。その複雑な印象に、グラスを傾けながら何度も香りを確かめる人もいた。

「さっきの白酒と全然違う」
という声も聞こえてきて、最後にまた驚きを感じる白酒だった。

羊肉、唐辛子、餃子。料理と合わせてみて分かる白酒

最初の「中国版スパークリング」とともに運ばれてきたのは、味坊ワインプレート、ジャガイモの冷菜、パクチーと青唐辛子のサラダ。
紅星二鍋頭をコーラで割った一杯を手に、まずは乾杯する。炭酸の泡が弾け、テーブルを囲む人たちの緊張も少しずつほどけていく。
冷菜をつまみながらグラスを傾けていると、会場のあちこちから「これは飲みやすい」「初めて飲む感覚!」という声が聞こえてきた。

続いて、羊肉とトマトの水餃子と味坊焼き餃子が運ばれてくる。
もちっとした水餃子と、香ばしく焼かれた餃子。同じ餃子でも調理法が変われば、合わせたときに感じる白酒の印象も変わる。
「こっちの料理には、どの白酒が合うだろう」
参加者は洋河大曲や茅台醇を少しずつ飲み比べながら、それぞれの組み合わせを試していく。
誰かが「この組み合わせが好き」と言えば、隣の人も同じ料理と白酒を合わせてみる。すると今度は、「私はこっちの方が好きかもしれない」と別の意見が返ってくる。
正解を教わるのではなく、自分の感覚で選び、その違いを話す。料理と白酒が、初対面の参加者同士の会話を自然に生み出していった。

そこへ、ラム串の炭焼き、鶏肉の唐辛子炒め、羊肉と長ネギ炒めが大皿で登場する。
炭火の香り、唐辛子の刺激、羊肉の旨味。存在感のある料理に負けないよう、白酒も少しずつ選び直してみる。
茅台醇と合わせる人もいれば、沱牌六糧のグラスへ戻る人もいる。西鳳酒との組み合わせを試し、最初の印象との違いに驚く人もいた。
「単体で飲んだときと、料理に合わせたときで印象が違う」
そんな声が聞こえるたびに、別のテーブルでも新しい組み合わせが始まる。

さらに、ラムのスペアリブカツ、塩茹で骨付き羊肉、農園野菜が続く。
脂の乗った羊肉を味わった後に白酒を少量含むと、口の中がすっと切り替わり、もう一度料理へ箸を伸ばしたくなる。
白酒だけを前にすると、そのアルコール度数に驚く人もいるかもしれない。けれど、羊肉や香辛料を使った料理と一緒に味わうと、その力強さが料理を楽しむための大切な要素に変わっていく。
「味坊の料理がおいしい」
「料理と一緒だと、白酒がぐっと身近になる」
そんな声とともに、テーブルの大皿は次々と空になっていった。

最後に登場したのは、手作り葱油餅と羊肉の混ぜご飯。
ここまで飲んできた5種類のなかから、自分が気に入った白酒をもう一度選び、締めの料理に合わせる。
最初は林さんの案内に沿ってグラスを傾けていた参加者も、この頃には自分から料理と白酒の組み合わせを試していた。
同じ料理を食べ、同じ白酒を飲んでも、感じ方は一人ひとり違う。
決められた組み合わせを覚えるのではなく、「これも合いそう」「私はこっちが好き」と、自分なりの楽しみ方を見つけていく。

ストレートだけではない。自分に合う飲み方を探す

今回も、白酒はストレートだけでなく、ソーダで割る飲み方を試した。

度数の高い白酒へ炭酸を加えると、アルコールの力強さがやわらぎ、その一方で、グラスの中から華やかな香りが大きく広がっていく。
炭酸水でも・コーラでも・ハイサワーでも。

何で割って合わせてみるかで、香りの立ち方も料理との距離も変わる。
中国で受け継がれてきた白酒の文化を知ることと、日本で新しい楽しみ方を見つけることは、どちらか一方を否定するものではない。

ストレートでは香りを知る。
ソーダで割り、印象の変化を楽しむ。
他の割り方では、新しい飲み方を知る。
そして、料理と合わせながら、自分に合う飲み方を探す。
「白酒はこう飲まなければならない」と正解を決めるのではなく、一人ひとりが好きな入口を見つけること。その自由さが、新しい白酒文化を広げるうえで大切なのだと思う。

白酒王子Tシャツをかけた大じゃんけん大会

料理も白酒も進み、会場全体がすっかり打ち解けたところで、林さんから特別な景品が発表された。

登場したのは、林さん自身の顔が大きく描かれた「白酒王子Tシャツ」。
しかも、世界に5枚しかないという。

その言葉を聞いた瞬間、会場の空気が変わった。
白酒に詳しい人も、初参加の人も、年齢も立場も関係ない。会場全員が一斉、林さんの掛け声に合わせて手を構える。
最初はグーではない。

「最初は、じゃんけんぽん!」という掛け声に笑いが起こる中で勝った人から歓声が上がり、負けた人は本気で悔しがる。

ただのTシャツと言ってしまえば、それまでかもしれない。
けれど、この場にいた人にとっては、白酒王子と参加者で囲んだ時間を持ち帰るための、世界に5枚しかない記念品だ。

勝ち残った参加者がTシャツを受け取ると、会場から大きな拍手が起こった。
その日の白酒や料理だけでなく、誰と笑い、何に夢中になったのかまで含めて、一つの体験として残っていく。
それも、イベントだからこそ生まれる白酒の楽しさだった。

白酒を知る場所から、文化が生まれる場所へ

第1回の終了後には、参加者がその日のうちに白酒を購入したり、イベントで出会った人同士で別の白酒提供店を訪れたりする動きが生まれた。

第2回には、1回目参加した方も戻ってきてくれた。

白酒を試飲して、「おいしかった」で終わるのではない。
気に入った一本を探す。
自宅でも飲んでみる。
別の店へ行く。
誰かを誘う。
次のイベントへ戻ってくる。

BAIJIU NIGHTは少しずつ、白酒を飲む場所から、白酒をきっかけに人と人がつながる場所へ変わり始めている。

イベントの終盤、林さんから、うれしい言葉が飛び出した。
「第3回もやりましょう!」
会場から、すぐに歓声と拍手が返ってくる。

その場で第3回の開催に向けた話が始まり、現在は2026年10月の実施を目指して計画を進めている。

・女性や若い世代が増えたこと。
・第1回の参加者が戻ってきてくれたこと。
・初めて白酒を飲んだ人が、自分の好きな香りを見つけたこと。
・世代を越えて、白酒を飲める店や商品の情報を交換する会話が生まれたこと。
・そして、イベントが終わる前から、「次も参加したい」という声が上がったこと。
イベントの開催回数や参加人数が増えたことではなくこんな経験ができることが嬉しい。

一度飲んだだけで、白酒のすべてが分かるわけではない。
5種類を飲み比べても、その向こうには、まだ知らない香り、地域、料理、飲み方がいくつも広がっている。
だから、また集まりたくなる。
一杯をきっかけに、知らなかった味や文化、人と出会う楽しさ。

神田で同じ時間を過ごした白酒の輪は、ここで終わらない。
次回は、10月。

今度は、どんな白酒と、どんな人に出会えるだろう。
グラスを高く掲げて、せーの。

「レッツバイチュー!」

この記事を書いた人

なかむらかほ