あの「金麦」がビールになったそうです。ここしばらく電車の中で町中で、広告をお見かけになった方も多いかと思います。わたくしも散々みまして、でも存在は知っているものの金麦ってほとんど飲んだことがなく、へえそうなんですか、くらいのもんでした。
ですが、新しいものは買ってみたい性分でして、ビールになった金麦を買ってみました。買った缶に『「生ビール」になった』と書いてあり、それを見た恋人が、え?生ビールってお店にある樽のことじゃないの?と、こう聞いてきたわけです。実はよくよく見るとコンビニで売ってるあの缶ビールにもこの缶ビールにもその缶ビールにも、生ビールという単語は書いてあるわけですが、改めて気にしない限りそんなものは目には入れど読んでいない、ということがわかってしまいました。
居酒屋にて、「とりあえず生!」と言えば、だいたいジョッキやグラスに注がれたたビールが出てきますし、瓶ビールを注文するときには「生ください」と言う人は基本的にはいませんでしょう。これが缶に書いてある生ビールとズレている。本来の「生ビール」とは、製造工程で熱処理をしていないビールのことだそうで、酒場好きの皆さんのなかで赤星の名前でおなじみのサッポロラガービール、あれが熱処理ビールです。つまり瓶で出されるビールの代表格ですが、明確に生ビールではないのです。
ビールとは、麦芽などを原料につくった麦汁を酵母によって発酵させる醸造酒ですが、昔はできあがったビールを熱処理することで、残った酵母や微生物の働きを抑え、品質を安定させていました。ところが技術が進み、細かなフィルターで酵母などを取り除くことで、熱処理をしなくても品質を保てるようになった。これが現代日本の生ビールの基本的な仕組みです。
生きた酵母が元気いっぱいに泳いでいるから生ビールというわけではなく、あくまで熱処理をするということの反対語としての、生。缶でも瓶でも樽でも生は生。
とはいえ、ビールは一切火を使わずにつくる酒、というわけではありません。ビールづくりでは発酵させる前の麦汁を基本的には煮沸しますから、そちらは熱々。国立にあるクニブルというクラフトビール屋さんが、古来の作り方を復刻という意味で、ローエールという麦汁の煮沸をしないビールをつくっておられますね。
生、という単語のなんとなく魅力的な響き、あれはなんなんでしょうか。日本酒にも生酒がありますし、生貯蔵酒というのもある。こちらは加熱処理をせずに貯蔵して、出荷前に一度だけ加熱する酒のことで、生といってるけど加熱をしているわけですが、それはそういう決まりなのです。もちろん生酒には生酒の表示上の決まりがあります。
酒から離れても世の中は生だらけ!生チョコレート、生キャラメル、生食パン、生ドーナツ。
さっきまで知らなかったのですが、生チョコレートは生クリームを使い、水分を多く含んだ柔らかなチョコレートという意味で、ちゃんと業界の表示上の決まりもあるそうです。生ビールでは熱処理をしないこと、生チョコレートでは生クリームや水分のこと。生という同じ漢字を使っているのに、言っていることは全く違う。
生食パンや生ドーナツはそういった技術や製法のことではなく、もうすこし食感やイメージのようなことでしょうたぶん。生食パンって、製造としては焼いてありますからね。でもおうちでは焼かなくてもいいですよ、とそういうことらしいです。あまり調べてないので違っていたら教えてください。ビールの話に戻ると、技術的な意味での生ビールと、頭の中で思い描く生ビールにズレがある、場合がある、ということを、実は知ってる人は少ないかもね、というお話でした。
「生ビール飲みてえな〜!」と言うときに、熱処理されてないビールが飲みてえなあ〜!と思っている、人がいないとはいいませんけど、基本的にはサーバーからでてきたキンキンのジョッキのソレを飲みたいと思っている人が多いはずで、それが、生ジョッキ缶なるアサヒビールの大発明につながるわけですね。中身はもともと生ビールなのに、さらに生ビールらしく見せるために、缶をジョッキに近づけた。
サーバーの音、ジョッキの冷たさ、立ち上がる泡、目の前に置かれた瞬間の、さあ飲むぞという気持ち。そういうものまでひっくるめた、生ビールという概念。
先週の辛口という言葉も、今週の生も、どちらも酒のことを説明するの単語ですが、表しているのは酒の中身だけではなく、それを飲む人間の感覚だったり、期待だったりすることもあるわけでした。酒って、いや、酒を飲む人間って、愛おしいですね。
さて今週のヨヨイノヨイは。
今日は生ビールじゃなくて瓶ビールが飲みたいな〜!お!この店赤星があるじゃないの、やったね〜な夜。
みなさんにもおありですか?
これはそんな日の一枚。
あの時たま訪れる今日は瓶でいきたいねというあの気持ち、あれは一体なんなのでしょう。
それではまた来週!
