白酒(バイチュー)の魅力にご用心!?

まずは直球で聞きます。みなさん、「白酒(バイチュー)」って知っていますか?
きっと、名前を聞いたことがあっても、あるいは中華料理屋のメニューの片隅で見かけたことがあっても、多くの人が抱くイメージはこれ一択じゃないでしょうか。

「中国のビジネス宴席で、お偉いさんたちが『カンペイ!』って言いながら、小さなグラスで何度も一気飲みする恐怖の強い酒」

あの度数50度超えのカーッと喉が焼けるような感覚、グラスを近づけた瞬間に部屋中に充満する独特の強烈な香り……。「出張先でストレートで飲まされて、一瞬でトラウマになった」「あれは罰ゲームの酒でしょ?」というお酒好きの人、実はめちゃくちゃ多いんです。かくいう僕たち『bacchante』編集部も、最初はそう思っていました。

でも、あえて今、声を大にして言いたいのです。 「私たちはまだまだ白酒について知らない」と。

あの高すぎる度数やツンとしたアロマは、ストレートで飲むから「高い壁」になって牙を剥くだけ。実は、炭酸やお茶で割った瞬間に、世界のどの蒸留酒も真似できない「最強のフレーバー・サワー」に大化けします。
だからこそ、今回の『bacchante』は、白酒をただの「珍しい異国のカルチャー」としてお勉強したくないし、単に「いま、ガチ中華が流行ってるから」っていうトレンド消費で終わらせるのもつまらない。

「きつい、一気飲みの酒」という先入観を一度きれいに横に置いて、ハイボールに代わる新しい乾杯の選択肢「チャイニーハイ」として、その本当の旨さと楽しさを、僕たち自身もワイワイ遊びながら、等身大の言葉でハックしていく知的でポップな大実験をはじめます。

メジャーなイメージの飲み方

「割る」ことで大化けする、世界最強のフレーバーアロマ

ウイスキーのハイボールも、レモンサワーも、クラフトジンも最高。だけど、僕たちの喉はそろそろ「新しい乾杯」を求めてるんじゃないか? そう思っていた矢先に出会ったのが、白酒のソーダ割り=チャイニーハイでした。

一言で言えば、それは「お酒のコペルニクス的転回」です。

キンキンに冷えたグラスに氷を躍らせ、白酒をツッと滑り込ませて強炭酸を注ぐ。その瞬間、弾けた気泡に乗ってフワッと立ち上るのは、アルコールのツンとした刺激ではなく、パイナップルや完熟バナナ、あるいはライチや妖艶な花のような、信じられないくらい華やかでフルーティーなアロマ。

「え、白酒ってこんなにいい香りだったの!?」 一口飲んだ全員の目が丸くなる。ストレートの時にはあんなに凶暴だった個性が、炭酸の泡に乗ることで、世界中のどのスピリッツも持っていない「最強の武器」へと反転するのです。

美味しいか、まずいか。度数が高いか、低いか。 そんな一面的な評価じゃなくて、「この突出した個性を、どう掛け合わせたら、僕たちの日常の最高の一杯になるか」

この特集で私たちがやりたいのは、まさにその実験です。

たとえば、ジャスミン茶やウーロン茶で割ったら、その華やかさはどう変化する? 脂っこい麻婆豆腐や、香辛料たっぷりの羊肉串と合わせたとき、口の中はどう幸せになる? あるいは、唐揚げや餃子といった、日本の大衆酒場の定番フードとも実は相性がいいんじゃないか?

そんな、まだ誰も試したことがない、分かりやすい言葉でラベリングされていない「白酒とつきあう楽しさの遊び場」を、現場のリアルな熱量そのままに届けていきます。

そもそも、白酒ってなんなんだ?

ここで少しだけ、白酒のバックグラウンドにも触れておきましょう。
知ると、チャイニーハイがもっと美味しくなるから。

白酒は、中国を代表する蒸留酒であり、世界でもっとも多く飲まれている蒸留酒カテゴリーのひとつです。実際、その消費量はウイスキーやウォッカを上回るとも言われています。

そして、その造りは、僕たちがよく知る焼酎とも大きく違います。
焼酎が液体のもろみの中で発酵していくのに対して、白酒は「固体発酵」。
モロコシや小麦などの穀物を主体に、土のように積み重ねた状態で発酵が進みます。

さらに特徴的なのが、その発酵環境。

特に濃香型白酒では、何十年、何百年と使い込まれた「窖泥(カオニー)」と呼ばれる泥の発酵窖を使います。
そこには無数の微生物が棲みつき、複雑な香りを生み出していきます。

実験室のように整えられた美しさではなく、自然そのものを抱き込むような発酵。
あのトロピカルで華やかな香りは、人工的につくられたものではなく、泥と微生物、そして職人たちの経験が何層にも重なって生まれたものです。
そう考えると、あの強烈な個性も、少し愛おしく見えてきませんか。

ボトルの違いも楽しみの一つ

カンペイの壁を超えて、新しい日常の1杯へ

かつてウイスキーがハイボールという飲み方によって、新しいカルチャーへと広がっていったように。
あるいは、紹興酒がザラメを入れるという日本独自の楽しみ方で、食卓に馴染んでいったように。

今、白酒に必要なのは、神格化されたお勉強でも、伝統の押し付けでもありません。
私たちの喉に馴染む、自由で楽しい、新しい飲み方の提案です。

「チャイニーハイ、最高じゃん!」

私たち自身が飲んで、驚いて、気づけばその沼にすっかりハマってしまった。
そんな実験の記録そのものを、ありのまま共有していきます。
知れば知るほど、ハマっていく白酒の魅力にご用心ください!

銘柄ごとの“化ける黄金比”の検証。
カルチャーの最前線を走る飲食店への突撃。
家飲みを楽しくするペアリングの提案。

あらかじめ正解もゴールも決めません。
白酒という、最高にディープな遊び場を、ゆっくり旅していこうと思います。
この特集が、皆さんの「今夜の一杯目」を少しだけ新しくしてくれたら嬉しいです。

それじゃあ、先入観を脱ぎ捨てて、五感をひらいて。
今夜も、レッツ・バイチュー!

この記事を書いた人

なかむらかほ