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Column
焼酎の裾野を広げたい。多分、ただそれだけのはなし。
子どもの頃、父親の晩酌の時間が好きだった。宮崎出身の父親は、家でよく「黒霧島」のお湯割りを飲んでいた。たまに僕も作らせてもらったのだが、グラスから立ち上る湯気は、子どもの鼻には刺激が強すぎた。顔を近づけると、目に染みるような感覚がある。 とにかく、臭い。「なんで大人はこんなものを嬉しそうに飲むんだろう」と、不思議でならなかった。 それでも父親の横に座っていたのは、スルメイカやほたての貝ヒモなんかの […] -
焼酎特集
『太子堂 かご』に白石さんがやってきた。仕込み水と天狗櫻、そして同級生の料理に酔いしれる夜
「これ、よかったら来ませんか」「太子堂 かご」の店主・市堀さんから、そんな連絡が入った。 聞けば、鹿児島・いちき串木野から白石酒造の蔵元・白石さんが東京へやってきて、みんなで焼酎を囲む会を開くという。参加者は20人ほど。蔵元を招く会としては比較的小さな規模だ。通常の会のように白石さんが店頭に立って大勢に向けて焼酎を説明するのではなく、参加者と同じ卓を囲み、膝を突き合わせながら一緒に飲む会だという。 […] -
Column
大衆酒場という、もうひとつのガストロノミー
赤ちょうちんの暖簾をくぐるとき 夕暮れ時の街を歩き、細い路地の入口でぽつりと灯る赤ちょうちんを見つけると、胸の奥がすっと温かくなる。使い込まれた布の暖簾(のれん)をくぐり、ガラガラと音を立てて引き戸を開ける。 その瞬間、店内の熱気が一気に頬を撫でる。大勢の客が交わす賑やかな話し声、グラスとジョッキが触れ合う音、大鍋でグツグツと煮込まれるモツの甘辛い匂い、そして炭火の上で肉の脂が落ちて立ち上る煙。 […] -
Column
一杯目のビールは、本当に「ビール」がうまいのか
酒場の風物詩と、小さな違和感 夕暮れ時の大衆酒場。引き戸を開け、ガヤガヤとした熱気の中に滑り込み、カウンターの椅子に腰を下ろす。上着を脱ぐか脱がないかのうちに、店員さんが「お飲み物は?」と聞きにやってくる。その瞬間、店内のあちこちから同じ言葉が聞こえてくる。「とりあえず、ビールで」酒場では馴染み深い、いつもの光景だ。しかし昔から、この「で」というたった一文字が、私の頭のどこかにずっと引っかかってい […] -
Column
たった一杯のために創られる一皿|「飲み物主軸」のペアリングがくれる圧倒的な納得感
グラスの底で起きた、主語の逆転劇 日常の食卓や少し贅沢なレストランで、私たちは「料理に合う飲み物」を選ぶことに慣れている。シェフが腕を振るった一皿に対して、ソムリエやサービス担当者がセラーや棚からぴったりな一杯を探す。ワインや日本酒、焼酎、あるいはお茶。それも間違いなく豊かな食体験だし、プロの知識と感性にはいつも感嘆させられる。 けれど、「wacasu」のペアリングイベントや、以前訪れたカーブドッ […] -
Sense
ANTELOPE第3回|液漏れしたボトルが世界最高賞ー滋賀から挑むミードの未来
液漏れボトルの奇跡と、養蜂家へ届けた世界一の報 全量国産蜂蜜への切り替えという大きな賭けに出たANTELOPEに、思いもよらない朗報が届く。世界最大級のミードコンペティションにおいて、出品したミードが最高の栄誉である「Grand Champion(最高賞)」を受賞したのだ。滋賀の小さな醸造所が成し遂げた快挙。しかし、この受賞の裏側には、谷澤氏本人も驚くような「棚からぼた餅」の真実があった。 「実は […] -
Sense
ANTELOPE第2回|「値切らない」—崩壊寸前の養蜂産業と、ミードが起こす循環
畑で出会った、効率では測れない価値 ANTELOPEを立ち上げた当初の谷澤氏は、原料を提供する日本の農業や一次産業に対して、どこか冷めた視線を向けていたという。 「最初は、国産の農業とかに、またなんか日本の生産者なんか大変なことやってんなみたいな。なんかテック入れたらいいのに、みたいに思ってる超嫌なやつだったんですよね。でもまあ、実際に地域でやってるし、よく来てくれるから収穫手伝い来ますよ、って手 […] -
Sense
ANTELOPE第1回|挫折と大事故、そしてコロナ禍。絶望の先で手繰り寄せたミードとの出会いと「確信の1本」
グラスに注ぐと、やわらかな琥珀色が光を包み込み、華やかな香りが立ち上る。「ミード(MEAD)」というお酒をご存じだろうか。 蜂蜜を原材料として造られる醸造酒で、一説には1万年以上前から存在すると言われている。ワインやビールよりも遥かに古い歴史を持つことから、「人類最古のお酒」として知られている。日本ではまだ馴染みが薄いが、世界各地では古くから親しまれ、多様なスタイルが発展してきた。 「人類最古のお […] -
焼酎特集
wacasu|36℃の街を逃れて、お茶とお酒の密会へ。
連休最後の月曜日。 最高気温は36.1℃。本来であれば外になんて出ず、冷房をガンガンに効かせた部屋で缶ビールでも煽っていたい夕暮れ時だ。けれど、今日ばかりは家でくすぶっているわけにはいかない理由があった。 「常連」と胸を張れるほどではないけれど、階段を上がれば「瓶ビール飲みます?」と声をかけてくれ、お店の人が自らグラスを持って乾杯の待機をしてくれる。それくらいには通っている店「wacasu」で、今 […] -
白酒特集
レッツバイチュー|水曜19時、秋葉原。白酒でスパイス爆弾を喰らい尽くす。
水曜日の19時前。秋葉原の、あのちょっと雑多な駅前を抜けて「香福味坊」のドアを開けた瞬間、クミンと八角などスパイスの香りがガツンと鼻をくすぐった。これこれ、この匂い。まだ週の半ばの水曜日にも関わらず「よっしゃ飲むぞ」とスイッチが入る。 今夜集まったのは、総勢21人の男女。 こういうお酒のイベントって「はじめまして……」とおそるおそる始まることが多いけれど、今夜はとば口からちょっと様子が違った。なぜ […]