なんとなく、空気が重たく感じる日。
体の中に湿気が残っているような、少し体が重だるい感覚。
ちゃんと料理をする元気はないけれど、このまま何もせずに一日を終えるのも違う気がする。
そんな日は、無理に「軽くする」のではなく、香りで「抜けさせる」ほうがちょうどいい。
暑さと湿気を、スパイスの風で吹き飛ばす。
コンフィとスパイス一瓶で整える、ジンのペアリング
「コンフィのオイルを、スパイス一瓶で使い切る」
重さを無理に消すんじゃなくて、その上から、違う方向の風を一筋通すイメージ。
平日の夜、あれこれ調味料を出すのは正直めんどくさい。けれど味に妥協はしたくない。
だから今日は、休日に仕込んでおいたコンフィのオイルの力を借りて、スパイス「一瓶」だけで味を決める。
それだけで、驚くほど感覚が整う夜の食卓ができあがる。
本日のお品書き-ジンとスパイスで組む、香りの設計図
・ジン(ソーダ割り)
マルエツなどの身近なスーパーでも手に入る、日常をリセットするための三本。
① 晴耕雨読 クラフトジン ジュニパーベリー 25°:芋焼酎由来の柔らかな甘みと、ジュニパーベリーの凛とした立ち上がり
② ボンベイ・サファイア:華やかで青い、ボタニカルの多重奏
③ シップスミス:伝統的な製法が生む、芯の通ったロンドン・ドライの骨格

・料理:オイルの旨みと、スパイス一瓶の潔さ
①鶏肉のコンフィ
②にんじんとガラムマサラのアチャール
③きのことオールスパイスのマリネ
④えのきとクリームチーズの山椒ディップ
⑤舞茸とカルダモンのアチャール
作り方(簡易レシピ)
① 鶏肉のコンフィ(全てのベース)
休日に仕込む。
鶏肉を鍋に入れ、ひたひたのオイル、ローズマリー、塩コショウ、ニンニク(皮ごと一欠片)。
鍋肌にプツプツと気泡が出る程度の弱火で2時間。あとは洗濯をしたり映画を観たりしながら待つだけ。
このオイルが今夜の調律師になる。
② にんじんとガラムマサラのアチャール
にんじんの千切りを作る気力はない。そんなときはピーラーで良い。
ピーラーで薄くスライスしたにんじんに、コンフィのオイル+ガラムマサラを少し火にかけて香りを立たせたものをじゅわっと和える。
③ きのことオールスパイスのマリネ
好みのきのこをフライパンで空炒り。
そこにコンフィのオイル、お酢、そしてオールスパイスを和える。味は塩でまとめる。
時間はおけばおくほど良い。
一瓶でシナモンやクローブの複層的な奥行きが出る。
④ えのきとクリームチーズの山椒ディップ
えのきの軸を際で落とし、手でバラバラにしてコンフィのオイルで軽く炒め、旨みを凝縮。
クリームチーズと山椒を合わせて混ぜたものに、えのきを和える。痺れがジンとの相性抜群。
⑤ 舞茸とカルダモンのアチャール
手で割いた舞茸に、コンフィのオイル、お酢、カルダモンを軽く炒める。
「香りの王様」の清涼感で、舞茸の滋味を浄化する。

香りで切り、香りで流す
なぜ、ジンとスパイスなのか?
ジンの「ボタニカル」と、スパイスの「香り」。
この両者が合わせる手は、掛け算の調和。
ジンの鋭い香りは、スパイスの個性を否定せず、むしろその輪郭を強調する。
コンフィのオイルの重さを、スパイスが「切り」、ジンのソーダ割りがさらりと「流す」。
一皿に一種類のスパイスしか使わない潔さが、ジンの清涼感と共鳴し、口の中を驚くほどフラットに整えてくれる。
実際に合わせてみると、休日の自分が用意してくれたオイルが、一瓶のスパイスで別の表情に化けていく。
一品ごとに違う風が吹き抜け、体の中の湿気がスッと消えていくのがわかる。
スパイス料理はまず、スパイスをたくさんかわにといけないと思いがちだが、そんなことはないと今日のペアリングで強く感じた。
お酒もしっかり楽しんだはずなのに、あとに残るのは驚くほどスッキリとした爽快感。
それでいて、スパイスのおかげで体の芯がじんわりとホカホカしてくる。内側から静かにエネルギーが満ちていくような、心強い感覚。
今日は「消耗した一日を埋める日」じゃなくて、「明日を元気にするための日」。
最後の一口を飲み干す頃には、湿気で重たかった体も心も、心地よく整っている。
あなたにとっての最高のペアリングが見つかりますように。